日立リヴァーレ、V-プレミアリーグ昇格(ほぼ)決定

4月6日(土)と7日(日)の二日間にわたって、秦野市総合体育館を舞台にV-チャレンジマッチ(入替戦)が開催されました。

男女V-プレミアリーグの下位2チームと、V-チャレンジリーグの上位2チームが、プレミアリーグの座を賭けて戦う、熱い戦いです。
チャレンジリーグの上位チームはここ数年固定されており、こういう言い方もなんですが、2強とそれ以外みたいな状態になってしまっていました。特に女子。
上位2チームによる無双状態ではあったものの、プレミアリーグの壁というのは思っている以上に厚く、2シーズン続けて返り討ち。無双状態というと聞こえはいいですが、より強い相手との対戦によってしかチームとしての強さは上がっていかないので、いわば頭打ち状態。天皇杯/皇后杯や黒鷲旗にサマーリーグなど、プレミアリーグのチームと対戦できるチャンスがないわけではないんですが、やはりV-プレミアリーグという世界でも実は屈指のリーグで4回総当たりで戦えるチームと比べると大きく経験値が変わってきてしまいます。

なので、あんまり長いことチャレンジリーグにいると、その水になじんできてしまうとでもいうべき停滞状態になってしまう可能性もあり、できたらチーム状態のいいときに一気呵成に昇格してしまいたいというのが偽らざる気持ちでしょう。鍔迫り合いができるならまだしも、鎧袖一触みたいな試合ではレベルアップができません。

今年の日立はチーム状態が非常によく、安定した守備力、バリエーションに富む攻撃陣、若手の勢いとベテランの技みたいなところがバランスよくミックスされており、いつ昇格するの? 今でしょ!と臆面もなく勇気ある発言をしてしまうくらい理想的な状態でした。
対象的なのが対戦相手のデンソー。最下位ながらコンスタントにいい試合はできているパイオニアとは対照的に日々もろくなってきているイメージがあり、ついにはチャレンジマッチに達川監督不在という事態に発展。体調不良なのか事実上の解任なのかは定かではありませんが、コーチが監督代理を務めていました。

さて、1日目の土曜日は幸先よくセットカウント3-1でものにしたデンソーですが、気は抜けません。
1セット取られたというのが気がかりなところ。
なお、2日間トータルの数字で決まるチャレンジマッチのレギュレーションは以下の通り。

1.勝敗数
2.セット率
3.得点率

上から順番に、より優れているチームのほうが勝ちとなります。
1~3まですべて同じだった場合、プレミアリーグ側の勝利。
つまり、日立が昇格するには、2日目の試合で以下の条件が必要になります。

1.セットカウント3-0の勝利
2.セットカウント3-1の場合、2日間の得点率で上回る

で、一日目のスコアが
25-18/19-25/25-20/25-19だったため、トータルでの得点は94対82となり、実に12点のビハインド。

ということは、セットカウント3-1で日立が勝っても、この日の得失点差がプラス13点以上ないと勝ってもダメなわけです。キビシー!
4セットで13点の差をつけるには、1セット平均5点の差をつけて取らねばならないのですが、(1セット落とすとして、最低でも2点のビハインドになります)これは非常に厳しい。大差でセットを取り続けないとならないので、些細なミスが最後の最後で効いてくる、なんてことになりかねません。

バレーボールは流れの競技。大差で勝つにはまずは流れを引き寄せることが重要なのですが、いきなり高橋沙織選手のサーブがノータッチエース!
続くサーブもブレイク*して、3本目もレシーブミスを誘ってサービスエース。
さらに4本目はまたもノータッチエースと、およそ考え得る中で最高の滑り出しを決め、第一セットをこの勢いのまま25-15という大差で取ります。
この時点でトータルの得失点差は日立のマイナス2に。

*バレーボールでは、テニスなどサーブ権のあるスポーツの一般的な呼び方とは逆に、サーブをキープすることを「ブレイクする」といいます。これはバレーボールではサーブ側のほうが一般に不利なため

第2セットもこのままの勢いで、25-20で奪取。得失点差はついにプラス3。
このままストレートで勝てれば、点数計算の必要なく文句ない昇格が得られます。
が、デンソーエアリービーズにも2011-12シーズン3位の誇りがあります。
降格する方が珍しいV-チャレンジマッチで、前年3位のチームが降格を喫したらヤフーニュースのトピックスを飾ってしまいかねません。
第3セット、追い詰められた選手は一丸となって奮起。
日立の動きも勝利を意識したかやや堅くなりサーブレシーブが乱れ始め、日立はこのセットを17-25で落としてしまいます。
これで得失点差はマイナス5に。

運命の第4セット。
日立が昇格するには、このセットを取った上で、6点差を付けておく必要があります。
つまり、デンソーに20点目を与えてはなりません。
デンソーの得点掲示に20の文字が点いた時点で、日立の挑戦は終了します。

序盤はシーソーゲーム。
勝つだけならある程度まではついていって、中盤あたりに抜け出して、得点差をキープしたままサイドアウトを確実にとっていけばいいんですが、なにしろデンソーに20点目を与えるわけにはいかない日立は今日序盤から随所に出ている驚異的な集中力とニュータイプばりの反射神経でミラクルレシーブを連発、長いラリーを確実にものにしてブレイクを重ねていきます。こういうのって精神的に効いてくるんですよ。打っても打っても返ってきて、

そして、ついに16-24という、昇格へのマッチポイントをつかんだ日立。
3点までなら奪われてもセーフ。

だが後がないデンソーもプレミアリーグの意地を見せ、ベテラン遠井の、さらに若い高橋のスパイクを拾っての連続得点で18-24に。
勝てずとも、あと2点取れれば、ゲームに負けても勝負には勝てるという映画みたいな展開に。

この局面、デンソーの司令塔、セッター熊谷のサーブはリベロの佐藤へ。
大事にキャッチし、セッター永松へきれいなパス。
ここで日立の司令塔の選択は、いずれ劣らぬ得点力を持つ遠井でも高橋でもドリスでもなく、バックセンターの位置にいた江畑でした。

審判の笛が、日立に25点目と試合終了、そして昇格資格取得決定を告げ、4年目の挑戦(1回は震災のため入れ替え戦そのものが消滅)でプレミアリーグ復帰を決めました。

昇格を決めたのは、たった2点の差。
それは、このセットだけのことではなく、昨日と今日で戦った8セットの中での、たった2点。
そのごくわずかな差が、天国と地獄を分けました。
いやほんと、これ映画かなんかじゃないのかと。

昇格を決めた日立リヴァーレの選手も、降格を喫したデンソーの選手も涙を流していました。
顔をくしゃくしゃにして泣き崩れる鍋谷を大竹がそっと抱いていた光景が印象的でした。
また、セルビア女子代表でもあったイヴァナ・ネーショビッチが、ショックでまともに歩けない江口の手をやさしく引いてあげていたのも心に残りました。ああっ、代わってあげたいっ(何)

これで、デンソーエアリービーズは来シーズンをV-チャレンジリーグで過ごすことが決まりましたが、もともと地力はあるチームですから(ここまで不振にあえいことのほうが不思議)、チャレンジリーグの全チームをまとめてなぎ倒して、1年後のチャレンジマッチでの再昇格も十分にありえます。その相手がどこになるかは分かりませんが、日立は来シーズン、プレミアリーグの海千山千のチームと渡り合わねばなりません。選手層を厚くして、誰か一人がケガをしてもカバーできる体制を作らねばならないでしょう。

あ、てことは来期のニコ生ではタイムアウト時のブーーーンの弾幕が見られないってことか。
あったらあったでうざいけど、ないとちょっと寂しいな・・・。
日立の応援はコール担当の人の動きがキレキレで面白いです。
あと、失点時のジングルが何気に好き。失点したとは思えない、ノリのいい曲なんですよ。

なお、タイトルでは昇格(ほぼ)決定としていますが、これは、昇格できる資格を得たという意味で、実際は日本バレーボールリーグ機構での審査を経て正式決定となります。
もともとプレミアリーグに所属していた日立だし、プレミア復帰を宿願にしていたわけですから、事実上昇格すると思っていいと思います。公式サイトでも「昇格を果たすことができました」と言ってるし。

そして、これまで、「日本代表唯一の非プレミアリーガー」の定冠詞は江畑のものでしたが、来シーズンからは井上香織がその座に就くことになりました。
上尾メディックスの庄司が代表に招集されていたときは2人だったんですけどね。

その上尾メディックスは今年もプレミアリーグ昇格を果たせませんでした。
粘りとか執念みたいなものが日立ほどなかったことと、相手がパイオニアだったことが敗因かなと思います。
ベテランが軒並み出場できず、若手もまだまだ成長途上では致し方なかったかもしれません。
と、毎年言ってる気がする。

これまでのチャレンジマッチでは昇格を逃しても比較的落ち着いていた滝沢選手が悔し涙をこぼしていたのを見て、なにかこう嫌な予感がしたんですが・・・引退とかしないよね?

→しました。あうあう。