EOS R5 vs EOS R6 vs EOS-1D X MarkIII。ファイッ!
某量販店で、EOS R5とR6、ついでにEOS-1DX MarkIIIを触ってきたのでいまさらですがEOS 7D MarkIIを6年弱、EOS-1D MarkIII(not 1D X)を同程度使ってきたユーザーとしての感想を述べておきたいと思いやす。
EOS R5:欠点のない優等生
現時点におけるキヤノンのミラーレスフラッグシップ機であるEOS R5。「5」をやたら強調していただけあり、EOS 5D MarkVと呼んで差し支えないくらいスペック的に死角はほとんどない高性能機です。EOS 5D MarkIVほぼ唯一の弱点だった連写速度も12コマ/秒(EOS-1D Xと同等!)という速度を手に入れており、オールラウンドに活躍できるマルチロール機と言えます。実際にファインダーを覗いたときに、その液晶の精細さは、ミラーレス市場で一歩も二歩もリードしているソニーのα7RIVと較べても圧倒的に自然でした。ドット数で言えば同等なはずなんですが、「液晶を間近で見てる」感が強いα7RIVとは違い、EOS R5の液晶はごく自然で滑らか。エッジにジャギーが出ることもなく、ボケ方も自然で、知る限りどのミラーレス機の液晶ビューファインダーよりも美しいです。iPhoneがRetina液晶を装備した前後くらいの衝撃がありました。
操作性については、メニューはEOSひと桁機伝統のメニュー構成で、そこに関してはすぐに慣れられると感じました。ただ、スリムになったボディと引き換えに情報量を失った右上部の小型液晶はやはり物足りないのと、設定変更のお作法がやはり多少変わっているため、EOS 7D MarkII→EOS 5D MarkIVほどかんたんな機種転換とはいかないなと感じました。
また、これはレフ機からミラーレスになった最大の恩恵だと思うのですが、レフ機にはつきものだったミラーショックがまったくないのはやはり衝撃的でした。12コマ/秒の超高速でメカシャッターを切り続けても動くのはセンサー前のシャッターだけで、猛烈な勢いでミラーが動くとき特有の衝撃がないのは軽くカルチャーショックです。そうはいってもフォーカルプレーンが上下する物理シャッターなのでスマホで高速連写してるときと同じとは行きませんが、ミラーショックによるブレが明らかになくなっていることは、レフ機ユーザーとしては素直に羨ましいです。
しいて欠点を上げるなら、高速連写時に液晶表示がついてこれなくなることでしょうか。ここはレフ機にまだ届かない点です。レフ機はレフ機で機構的に瞬間的なブラックアウトから逃れられないですが、遅れて見えることもまた構造的にないので、どっちを取るかの問題だと思います。
EOS R6:センサーにコストを全振りした一点豪華派
と褒めちぎっておいて次はR6です。この機種の特徴は、なんといってもEOSの現行フラッグシップ機、EOS-1D X MarkIIIのセンサーをベースにカスタマイズしたというCMOSセンサーです。さまざまなレビューでも繰り返しこのフレーズが出てくるので、キヤノンマーケティングはその1点をこの機種のウリをしていることは明らか。外観もEOS R5とほとんど同じで、連写速度もR5と同じ、あとは採用しているメディアがCFexpressではなくデファクトスタンダードと言えるSDXCカード(もちろんUHS-2対応)というところが仕様上大きく異なる点です。上位機種のR5はCFexpressという超高速SSDカードを採用していますが、これは4,500万画素かつ12コマ/秒という高画素高速連写機であることと、8K動画を記録するために必要だっただけで、2,000万画素しかないR6にはオーバースペックです。
外観的な差異としては、R5にはあった液晶が取っ払われていることが大きな差でしょうか。R5の液晶に表示される情報量でも十分とは言い難かったのに、それさえなくなってしまったので、設定確認には大柄な背面液晶を使わざるを得ません。正直これはめんどっちいです。
液晶ビューファインダー(EVF)については、R5から順当にスペックダウンしており、見え方もそれなりに粗くなっています。それでもα7RIVと同等以上のみやすさに感じました。というかあの店頭になったα7RIVの液晶、あまりにもプアだったんですがもしかしてα7系の液晶って著しく粗くする節約モードみたいなのあったりしますか? もしあの見え方で全力なのだとしたらあれで満足してるとは思い難いのですが・・・。
閑話休題。もうひとつの問題点は、ボタンの少なさです。7D MarkIIでは、ISOやドライブモード、ホワイトバランスはそれぞれ独立したボタンを押してからメイン電子ダイヤルで変更し、右肩の液晶でひとめで確認できるという、ユーザーからしたらきわめて直感的なものだったんですが、スリムになったR6はM-Fnボタンを押し、サブ電子ダイヤルで変更したい項目を選び、メイン電子ダイヤルでモードを選んでSETボタンで決定、みたいなめんどくさい方式に変えられてしまっていました。これはEOSひと桁からの機種転換時になれるまでかなりもどかしく感じるだろうポイントかなと感じました。
全体的に、EOS R6/R5はレフ機と併用しようとすると戸惑いがちで、レフ機のお作法が体に染み付いていればいるほど慣れが要るように感じました。そうはいってももうあと数年経ったらレフ機は出なくなる可能性も高いわけで、今のうちから慣れておくのもひとつの手かもしれません。
あ、あとR5/R6ともAFポイントの選択はスティックで行うわけですが、なまじ選べるポイントが「ほぼ全域」とむちゃくちゃ広い一方でフォーカスポイントを思い通りの場所でびたっと止めるのがちょっと難しいです。もしかしたらThinkpadの赤ポッチ使いであればうまくいくのかな。
思い通りの場所に最短距離で移動させられるようになればフォーカスロックさせて構図を確定してシャッター、という流れが過去のものになるなと思いました。
EOS-1D X MarkIII:さすがのフラッグシップ。ただやっぱクソ重い
そして、店頭価格76万とかするキヤノンのフラッグシップ機、EOS-1D X MarkIII。知っている人も多いと思いますが、EOS-1系だけは数字とEOSの間をハイフンで繋ぎます。EOS 5D MarkIIIは正しいですが、EOS 1D X MarkIIIは表記として正しくないわけです。キャノンじゃなくキヤノンだったりEOS 1D XじゃなくEOS-1D Xだったりいちいちしゃらくさいです。さらに言えば、EOS-1DXではなく、EOS-1D Xというふうに、1DとXの間には半角スペースが入ります。
この機種はまずとにかく重いです。といっても、EOS 7D MarkIIもバッテリーグリップをつけると似た感じに重いので、別格に重いというわけでもないです。かつ、実はEOS-1D X MarkIIよりちょっと軽くなってたりします。
性能的には、先代のEOS-1D X MarkIIを凌ぐ16コマ/秒という超高速シャッターが最大の目玉で、センサー解像度は先代と変わっていません。ダイナミックレンジや実効感度で進化はもちろんしていますが、解像度だけならこの機種より倍も3倍も多い機種は珍しくもないです。なんとなれば、ミドルクラスのEOS 90DはAPS-Cサイズながら3000万画素を超える解像度を持っています。
また、さまざまな工夫が盛り込まれているとはいえ1秒間で16回もシャッターを、より正確にはミラーボックスという機械部品を可動させるというのはやっぱりむちゃくちゃなので、EOS R5/6で12コマ/秒の連写をしたあとでEOS-1D X MarkIIIの連写をすると手の中で信じられないほど暴れます。ちゃんとホールドできる持ち方ができないとダメってことですね。
それでも、撮影の現場で即時変更する可能性があるあらゆる設定をボタンひとつで呼び出して電子ダイヤルやマルチスティックで変更できる便利さは、さすがスポーツや報道の現場でプロに使い倒されてきただけのことはあります。
なお、フォーカスポイントについてはAF Onボタンを兼ねたタッチセンサーでなめらかに動かすことができるようになっています。従来のマルチスティックよりも遥かに素早く鋭く変更させることができますが、慣れないとなかなか思い通りの場所に一度でぴたっと止めるのは難しいですね。
これはEOS R5/R6を触ったあとだから感じた「欠点」ですが、ほぼ全面をフォーカスポイントにできるミラーレス機とは異なり、レフ機はどうしてもフォーカスポイント数が少なく感じてしまいます。
191点ものAFポイントがあるEOS-1D X MarkIIIですが、周辺部にはAFポイントがありません。対してEOS R6でも6,072ポジションのAFポイント。多けりゃいいってものでも実はないのですが、数字の上では完敗です。
EOS 7D MarkIIユーザーが金に糸目をつけずに選ぶなら?
というわけで、ごく短時間でのインプレッションをもとに感想を書いてみました。このインプレッションを元に、ベストを選ぶなら・・・やっぱりEOS-1D X MarkIIIとなります。
これはあくまで「EOS 7D MarkIIユーザー」が「価格を度外視」して「いますぐ買う」ならどれかという観点で決めたものです。
現実には予算とかいうものがあるので、それを加味して総合的に考えると・・・
EOS-1D X MarkII(ただし状態のいいセコハン)が現状でのベストバイだと思います。
ここに来てその結論かよと思うかもしれませんが、よく考えてみて下さい。この機種は確かに4年前に発売された型落ち機種ですが、2020年の元旦の時点では世界トップシェアのカメラメーカーが技術の粋を注ぎ込んで作り上げた、プロがお金を稼ぐための機械、まごうことなきトップエンドの一眼レフ機だったわけです。型落ちになってしまう直前までは、新品であれば60万はしたフラッグシップ機。それが、中古とはいえEOS R6とほぼ同じ価格で買えるわけです。ショット数の少ない、程度のいい中古であれば、総合的に考えてEOS R6の敵ではありません。
確かにEOS-1D X系は堅牢だけに大きく重く、メンテナンスも部品代も高額で、メディアもコンパクトフラッシュかCFastカードと、事実上オワコンなうえ高価なメディアしか使えません。それでも、あと4年現役を張れるだけの実力はあります。で、4年後に型落ちになって安くなった中古のEOS-1D X MarkIIIに買い換えるわけです。
重さと大きさについては、もともとEOS 7D MarkIIを本気で使っているときはバッテリーグリップにバッテリー2本入れ、予備のバッテリーを2本かばんに突っ込んでるくらいなので、自分の使い方ではなんら問題にはならないわけです。わははは。
でもまぁ、そういう特殊な使い方ではなく、一日に8,000枚とか取るのが当たり前みたいな人でなければ、EOS R5を買っておけば向こう5~6年くらいはなんら不自由なく遊べると思います。マップカメラとかキタムラとかフジヤカメラでは60回まで分割手数料0%とかいうちょっと頭おかしい買い方ができるので、それであればたとえばボーナス時追加10,000円するとして月6,000円、24-105mm F4の赤レンズを一緒に買っても月8,000円ちょいで手に入ります。これ結構アリだと思うんですよ。どうですか?
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