屋内競技を撮るための機材選び~バレーボールを撮りに行こう

2021年1月3日

石田瑞穂@V-プレミアリーグ 2017-18 神奈川大会

バレーボールは持続的な瞬発力の競技

バレーボールをテレビで見たことがある人はそれなりにいると思います。
良くも悪くも注目を集めるジャニーズとのタイアップによる放送とかね。

バレーボールという競技は、サーブ(いろいろ)→レシーブ(ゆったり)→トス→(ふわり)→スパイク(最高速)→レシーブ(ふわり)というような、静と動とまではいきませんが、テンポがある球技です。
速いときは100kmを優に超えますが、ゆったりするときは、ボールに書かれたロゴが読めるくらい回転がなくなります。

そんなバレーボール、会場に観戦に行ってみるとわかるんですが、写真を撮影している人がけっこう多いスポーツです。サッカーや野球に比べてコートや選手が近いということが一つの理由なのかなと思います。

でも、撮ってみたけど思ったようなバシッと止まった写真が撮れないという人は多いんじゃないでしょうか。

プロカメラマンのような高価なカメラやずっしり重い望遠レンズなんて誰もが買えるわけじゃないですから仕方がないんですが、それでもできればカッコいい写真が取りたい! 友達に見せてドヤ顔したい!という人のために、できるだけいい写真が撮れるノウハウを、バレーボール観戦・撮影歴12年の筆者が共有していきます。

ビッチリ止めた写真なんてそう撮れない

女子ならまだしも、男子のスイングスピードというのは半端ないので、わけわからん速さでボールがすっとんできます。コートエンド側で観戦していると、練習のときにどんどこどんどこボールが飛んできます。もちろんスタッフがいますが、その頭上をやすやす超えていくので、コートエンドで撮影している人は特に練習のときは気をつけましょう。実は試合の時は観客席に飛んでくることはあまりありません。練習の時がいちばん危険です。

で、速いということは、それをきっちりと止めた写真、それもできればボールにめりこまんばかりにたたき付けた瞬間を撮ろうとするとすげー大変です。1日(2試合)で10,000枚近くを撮ることもありますが、(インパクトの瞬間だけを狙ってるわけじゃないにせよ)スパイクのインパクトの瞬間、手がボールにめりこんでるような写真は数えられるほどです。

ちなみに私は、色を合わせるのが面倒なのと、画質をできるだけ上げたいのでJPEGでは撮影せず、RAWだけで撮っています。JPEG+RAWという撮り方をしていた時期もありましたが、連続撮影枚数が減ってしまい肝心な時に記録待ちという経験を何度もしたことと、Windowsのエクスプローラ上でRAWファイルを普通にプレビューできるようになったため、JPEGで撮るのを止めました。
そのため、一日で250GBくらい撮ることもザラ。あとで見て、ピントが合ってない写真をざくざく削除してはいますが、それでもすごい速度でHDDが埋まっていきます。

閑話休題、比較的タイミングを取りやすいサーブでもインパクトの瞬間を撮るのが難しいのは同じで、珍しく撮れたのがこれ。

マノン・フリール@V-プレミアリーグ 11-12 東京大会
マノン・フリール@V-プレミアリーグ 11-12 東京大会
Canon EOS-1D MarkIII / EF70-200mm F2.8L II IS USM / F2.8 ISO2000 1/400sec

これはもう珍しいくらいにジャンプサーブのインパクトの瞬間が撮れた作品です。
手がブレてるのがちょっと残念ですが、ここまで撮れれば御の字です。

もうひとつ、これはNECレッドロケッツの古賀紗理奈選手のスパイクです。

古賀紗理那vs奥村麻依・柴田真果@V-プレミアリーグ2016-17 ファイナル6 大田大会

ほぼインパクトの瞬間です。
サイド側だと難しいアングルですが、エンド側だとブロッカーの表情と合わせて撮れるのがいいですね。
ちなみにこれ、正面から撮ればスパイカーの表情撮れるんじゃ?! と思うかもしれませんが、そううまくはいきません。

古賀紗理那vs奥村麻依・柴田真果@V-プレミアリーグ2016-17 ファイナル6 大田大会

こうなります。エンド側ってそんなに席が高いところにないのと、さすがに白帯よりはるか高くまでジャンプできる選手ってそうそういないので、だいたいこんな感じになります。
もちろん、これは同じ日の別セットでの写真です。
プロカメラマンなら1セットの中でやろうと思えばできるんでしょうけど。

このページでは、こういった写真を撮るためのあれこれをレクチャーしていきたいと思います。

機材はポイント絞ってできる範囲で

インパクトの瞬間が撮れるかどうかはともかく、できればこういうきちっと瞬間が止まった写真が撮りたいですよね。
そのためには、撮影機材上いくつかの条件があります。
わからない用語がちょいちょい出てくると思いますが、適宜説明します。

《 カメラ編 》
1.ISO感度が上げられる
2.ISO感度を上げてもノイズが乗りにくい
3.連写ができる
4.コンティニュアスAF機能がある

《 レンズ編 》
5.ズームは必須
6.絞り(F値)が小さい
7.手ぶれ補正機能がある
8.常識的な重さ

《 メモリーカード編 》 
9.(主にSDメモリーカード)CLASS10程度以上の速度がある

カメラ編~暗い屋内撮影では「ISO感度をどこまで上げられるか」が重要

まずはデジタル一眼レフの本体についてです(ミラーレスでもだいたい同じです)。

本体でできることってそんなに変わりません。
その中で、最も重要なのは「連写性能」と「ISO感度の耐性」です。

連射性能はそのまま、1秒間に何枚撮れるか。
で、ISO感度というのは、どの程度弱い光を記録できるかを表す数字で、フィルムカメラのころはフィルムにこの数字が設定されていましたが、デジタルカメラになってからは本体側で設定する項目になっています。フィルムに100とか400とか書いてあった、あの数字です。

これをカメラで高い数字に設定できることが必須です。ただ、ISO感度を上げるとノイズが乗りやすくなるので、高く設定できた上でノイズ耐性が高いことが望ましいです。

問題なのは、メーカーのウェブサイトにあるスペックはあまり役に立たないということです。
「撮ることが可能である」ことと「写真として成立するかどうか」は別なので。
ついでに言えば「使用者がOKとできるか」も違いますからね。

目安としては、ISO3200を常用感度としているカメラであればいいと思います。
インプレスのデジカメWatchとかにレビューが出ているので、そのへんを参考にしてみるといいでしょう。
ISO800くらいとISO2500あたりで大差なければベター。
RAW撮影できるカメラなら、RAWで撮っておいてソフトウェアでの現像時にノイズを消すのがとても有効です。クソ面倒くさいのでガチで趣味にしたい人でなければおすすめしません。

ちなみに、実際に見に行ったことがある人なら「フラッシュ機能をオフにしてください」というアナウンスを聞いたことがあると思います。
けっこういるんですよ、フラッシュ焚いちゃってる人。でもあれ、ガチでマジにNGです。ダメ、絶対。
強い光は選手の視界を一時的に潰してしまいかねません。

しかも、スタンドからフラッシュを焚く意味はまったくありません。
なぜなら、デジカメ内蔵のフラッシュはコートでプレーしている選手を照らせるほどの光量がないからです。
目潰しだけはできて、写真にはなんのメリットもないわけです。
基本中の基本マナーですので、絶対にオフにするようにしましょう。
できない機種はどこにもありませんから。

閑話休題、カメラ本体の撮影機能編を続けます。

◆連写機能
目安は6~8枚/秒程度でしょうか。
ミラーレス一眼の中には、ミラー駆動がないメリットを活かしてとてつもない連写能力がある機種もありますね。あれもアリだと思います。

◆コンティニュアスAF
そして、コンティニュアスAF機能。
さぁ聞き慣れない専門用語が出てきました。かんたんに言えば、撮りたい物体にピントをあわせ続けてくれる機能のことです。
前後に被写体が動くスポーツ撮影では必須の機能です。スポーツ以外でも、たとえばじっとしていない子供とか犬猫とかにピントをあわせ続けるなどの用途があるので、多くのデジカメでこの機能は搭載されています。

ちなみにメーカーによっては違う用語を使っており、キヤノンではAIサーボAF、ニコンではコンティニュアスAFサーボ、ソニーはコンティニュアス (AF-C)、パナソニックならAFC(コンティニュアス)などといいます。

バレーボールというのは、選手が前後左右に激しく動きますが、カメラの通常のオートフォーカスというのは、シャッターボタンを半押ししてピントを合わせたら、その時の距離でピントを合わせるので、ピントをあわせた後に被写体が50cm奥や手前に移動したらもうピントが合いません。移動が真横だったとしても、最初にピントを合わせた距離とは違ってしまいます。スポーツ報道ではそれでは話にならないため、常にピントを合わせ続ける機能が必要で、これを「コンティニュアスAF」機能といいます。

名称は違っても、この機能はほとんどのデジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラにあると思うので、心配しなくてもいいです。もっとも、安価なモデルと高価なモデルでは精度にかなりの差があったりもします。ただ、10年前の最上位機種と最新の廉価な機種モデルでは最新廉価モデルのほうがよかったりもします。デジタルこわい。

レンズ編~割り切りが大事!

なにはなくとも望遠レンズが必要です。望遠は(レンズ名称の表記上で)200mm程度まであれば問題ありません。
ただし、最大望遠にしたときのF値には注意が必要です。
どれそれ?という人が多いと思いますので、例を挙げて説明していきます。

EF70-300mm F4-5.6 IS USM

これは、キヤノンの比較的廉価なズームレンズの製品名です。
ここに、ほぼすべての情報があります。いっこづつ見ていきましょう。

EF:EFマウントという、レンズのフォーマットのこと。キヤノンのカメラを使っている人以外にはなんの意味もありません。
70-300mm:焦点距離。70mmから300mmまでのズームレンズということ
F4-5.6:F値(開放絞り)。数字が変るのは、70mmのときには最小絞りが4.0だけど最大望遠の300mmのときには5.6になるよということです。
IS:手ぶれ補正機能があるという意味(ニコンではVR、ソニーはOSS)
USM:オートフォーカス機構の駆動に、超音波モーターを使っているという意味(ニコンでは製品名には表記されませんが、SWMといいます)

わかりにくいのはF値。これは「レンズがどれだけ多くの光を通せるかを表す数字」で、小さい方がより多くの光を通します。
この数字を小さくするためには、より直径の大きなレンズを使う必要があり、そのため、一般論として高価になります。

屋内競技というのは室内照明のみで太陽の光がなく、屋外競技より絶対的に光量が少ないため、適正な明るさを得るためには長い間シャッターを開けて光を取り込まねばならないため、シャッタースピードが遅くなりがちです。しかし、シャッタースピードが遅くなると、トップアスリートの動きについていけず、腕がマンガのように残像だけになったりします。それはそれで芸術的かもしれませんが、ぴたっと止めた写真を撮るなら一定のシャッタースピードは欲しいですよね。

一例を出すと、上で紹介した古賀紗理那選手のスパイクは1/1250というシャッタースピードで撮っています。
経験上、ぴちっと止めるには1/800程度欲しいです。

といってシャッタースピードだけを速くすると、速くしたぶんレンズを通る光の量が減り、暗い写真になってしまいます。
そうならないためには、ISO感度を高くして感度を高めるか、レンズを通る光を多くするか(=F値を小さくする)のどちらかをしないとなりません。
しかし、ISO感度を高くしすぎるとノイズが増えて、ザラついた写真になりがちです。
Photoshopに代表される画像修整ソフトを使っても限界があるし、レタッチというのは基本的に無から有を作るものではないので、多少はごまかせても根本的な解決にはなりません。

◆F値の小さいレンズを選ぶ
だからF値の小さいレンズが必要になるんです。
スポーツカメラマンがバズーカのようなでっかいレンズを持っているのも、ひとつにはシャッタースピードをできるだけ速くしながら画質を高くしたいからです。
私は、今はCanonの70-200mm F2.8L II IS USMというわりと高価なレンズを使っていますが、この「F2.8」というのがF値です。
このレンズは広角側も望遠側も同じF2.8ですが、比較的安価なズームレンズは望遠側になるに従ってF値が落ちていき、望遠側がF5.6~F6.3程度になるレンズが主流です。

F2.8とF5.6がどのくらい違うかをわかりやすく言えば、同じISO値だった場合、シャッター速度が1/4になります。
「F2.8のレンズ」なら1/1000で撮れるところを、「F5.6のレンズ」では1/250でしか撮れなくなってしまうということです。
このF5.6のレンズで1/1000のシャッタースピードを実現するには、ISO感度を4倍にする必要があります。
上の古賀紗理那選手の写真を例に出すと、これはISO2500なので、同じシャッタースピードをF5.6のレンズで出すにはISO10,000という数値が必要になります。よほどいいカメラでなければ、大昔のフライデーやフォーカスのスクープ写真のようなかなりノイジーな画像になってしまうでしょう。

このシャッタースピード・ISO感度・F値は3すくみの関係にあります。
あちらをたてればこちらがたたず。
このへんの解説をきっちりやってしまうと本が一冊書けてしまうので、ここでは書きません。

ただ、画質にダイレクトに反映されるのは「ISO感度」だということは覚えておいて下さい。
ざらついたノイジーな画像になってもビタッと瞬間を切り取りたいのか、多少腕がぶれたとしても選手をきれいに撮りたいのか。
両方を妥協なく追うのなら、諭吉さんをたくさん用意するか、レンズメーカーのレンズを使うといいでしょう。

Canonの70-200mm F2.8L III IS USMが297,000円するところ、たとえばシグマという定評あるレンズメーカーの同等スペックの商品(70-200mm F2.8 DG OS HSM (Sports) )なら158,000円で手に入ります。(価格はいずれも2020年12月のヨドバシ・ドットコム調べ)
断言しますが、倍の金額の純正レンズが倍いい写真を撮れるわけではありません
あと「どっちみち高ぇよ」。まぁ新品でなくとも中古でもいいと思います。
ただ、レンズメーカーのレンズは個別に対応するメーカー(正確にはマウント)が決まっていますので、自分が使っているマウントに対応しているかは調べておきましょう。

◆手ブレからは逃れられない
手ブレは、おおざっぱに言って「レンズの焦点距離分の1」あたりから出やすくなると言われています。
焦点距離が300mmのレンズなら1/300を割り込むと手ブレしやすくなるというわけです。

そんな手ブレの魔の手から逃れられるのが、手ブレ補正機能です。
この機能にも大きくわけて2種類あり、本体のセンサーを動かす方式と、レンズを動かす方式がありますが、ここではレンズを動かす手ブレ補正機能について説明します。

レンズを動かす手ブレ補正機能は、ほとんどのレンズメーカーが開発しており、Canonでは IS (Image Stabilizer)、Nikonでは VR (Vibration Reduction)など、メーカーによって呼び方は異なりますが、原理をざっくり言えば手ブレと逆方向の動きを与えることで動きを打ち消す機能です。
これにより、手ブレは本当に気持ち悪いほどに抑えられます。量販店で試してみるとわかりますが、最初は気味悪いです。

手ブレというのは、人間が生き物である以上絶対になくせません。
心臓が鼓動し、血管を血液が脈打ちながら流れ、その血管がくまなく通っている筋肉で重量物を支える以上、こまかなブレというのはゼロにはできません。
プロは正しいカメラの持ち方を知っているのでその影響を最小限にできますが、素人はまずカメラの持ち方構え方からしてダメダメなので、こういったテクノロジーに助けてもらう必要があるのです。その分ちょっとだけ高価になりますが、その効果は絶大です。これだけは「なくていい」とは言いません。下手くそなら道具とテクノロジーに助けてもらうんです。私も大分助けられています。

◆週明けに筋肉痛になりたくない
常識的な重さであることは大事です。
ずっと持ってると手ブレしやすくなりますし、持ち運ぶのも単純につらいです。
週明けに筋肉痛に悩まされるのはいやですし。
とはいえ筋力は人それぞれなので、こればっかりは量販店で実際に持ってみてください。言っておきますが、いいレンズほど大きく厚いガラスをたくさん使っているので重いです。
ポイントは、「1試合は1時間半程度はかかる」ということ。バレーボールはセット間以外はあんまりインターバルがないため、ずっと持ち続けることになります。
1分2分なら大丈夫でも、数時間支えることになるんだということをお忘れ無く。

大きいことはいいことだ(メモリーカード編)

最後に、メモリーカードについて。
最近のカメラはほとんどがSDメモリーカードを使いますが、SDメモリーカードには「Class」というものがあり、これは書き込み速度の下限を保障するものとされています。要はこのClassの数字が大きい方がいいぞということです。
最近主流の SDHCメモリーカードであれば、Class6以上(といってもだいたいいまはClass10が当たり前です)、最新規格のSDXCメモリーカードであれば特に気にする必要はありません。

とはいえ、Class10ってけっこう遅いので、これをクリアしていても遅いカードは山程あります。連写するとすぐにつっかえちゃいますのでご注意ください。

ただ、携帯電話を機種変して使わなくなった2GBのマイクロSDカードをアダプタつけて使えばいいや、みたいなのはダメです。64GBのSDXCメモリーカードの場合、2000万画素のデジカメなら設定にもよりますがJPEGで4,000枚以上撮れるので、そのくらいのを買っておけばいいでしょう。価格はおおよそ3,000円程度です。

ただ、最近のカメラは高画素化がはなはだしい上、ムービーで撮れる機能もあったりするので、撮りたいときにメモリーカードがいっぱい、ということもなくはないです。これほどやるせないものはないので、複数枚持っておくか大きめのを持っておくかしたほうがいいでしょう。特にムービーモードでの消費は半端ないです。SDメモリは見ればわかるように金属の端子部がむき出しなので、単体で運ぶときは付属しているケースに入れるようにしましょう。

ムービーも撮りたいならスマホでいいよ

近頃の一眼レフデジカメは、動画が撮れるのが普通になっていますが、ぶっちゃけ画質はそこまですごいものではありません。
メーカーサンプルを信じてはいけません。静止画よりも信じちゃダメです。
そこそこまともな動画を撮りたいなら、スマホのほうがなんぼかマシだと言っておきます。