知りたいのはそこじゃない

2021年10月13日

この手のよく見る調査で残念なのは「低BMI=肺がんリスク評価高」で結論してしまっていること。

「低BMI」はざっくり言えば「痩せ型体型」のことだけれど、BMIは身長とは違って、生活習慣、食事、体質、運動などのあらゆる生活行動の結果であって、あるひとつの要素だけで決まるものではない。

ちなみにBMIの計算式は「体重kg ÷ (身長m)2」。
160cmで60kgなら「60÷(1.6×1.6)=23.43」。
この記事で取り上げられてる「女性で扁平上皮がんに罹りやすい」とされているのが19未満で、これがどういうことかというと「(日本人女性の平均身長である)身長158cmで体重47kg」でBMIがあっさりと19を割ってしまうわけです。
ちなみに身長170cmだと体重54kg(身長マイナス116)でやっとBMIが19を割るので、低身長のひとほど低BMIになりやすい傾向になる値と言えます。

この記事を読んで「そうか、低BMIは危険なのか。じゃあ多少太ってるほうがいいんだな」といってラーメンだのポテチだのをぱくついたら今度は糖尿病とか高脂血症みたいな別のリスク要因が出てくる。

まさか国立がん研究センターほどの研究機関が「低BMI=肺がんリスクが高いからみんなもうちょっと太れ」みたいなバカなことを言い出すとは思わないけれど、こういう間違ったメッセージを発信しちゃうメディアが当然存在することを想定した発表をするべきだと思う。

なぜなら低BMIという「結果」ががんを生むわけではなく、「低BMIになるに至ったプロセス」のどこかに問題が潜んでいるから。

本当に知らなければならないのは、「女性でBMI値19未満の人に扁平上皮がんのリスクが有意に多い」のはなぜなのか。そこを深堀り調査しなくては意味がない(やってるだろうとは思う)。

身長に対して体重が平均を大きく下回っているのが低BMIだけれど、そうなるに至ったどこに問題があるのか。行き過ぎた無理なダイエットによる必須栄養素の不足から抵抗力が落ちてしまってがんになりやすいのか、ホルモンバランスが崩れて代謝系に問題が起きているのか。過度の運動で呼吸器に負荷がかかっているからなのか。そこにこそ真実がある。「低BMIだとがんのリスクが高いでぇす」なんてのはデータさえ揃ってれば小学生の夏休みの自由研究レベルの結論じゃないですか。

低BMIが悪者なのではなく、BMIが低くなる何らかの要因ががんリスクを増加させる。BMIは身長と体重のバランスなので、それが生き物としての平均より著しく低くなるからにはそれなりの原因がある。でもそれはBMIの数字だけからはなにも読み取れない。いうなれば「テストで90点以上取る確率が高い人間はいい大学に行く確率が高い」みたいなもので、それを受験生が聞いたところで「でしょうねー」としか言えない。

ずっと昔、ワインに含まれるポリフェノールが体にいいというのが話題になったとき、ちょっとしたワインブームになった。でもこのことを肝臓の専門医に聞いたら笑ってた。

「ポリフェノールが体にいいって言ったって、(アルコールに弱い日本人が)アルコールをそんなにいっぱい飲んで体にいいわけないじゃない」