天を舞うモモンガを飼育? ロバの交配?(パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊より)

2019年12月3日

パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊をBDで見ました。
内容についての感想はさておき、今回はちょっと気になった箇所があったので取り上げてみます。

55分30秒頃の、ヒロインであるカリーナがジャックの船に乗せられて、秘宝「ポセイドンの槍」に至る地図を見せろと迫られるシーン。

日本語版ではこういったやりとりがありました。

ジャック「俺に地図を見せろ」
カリーナ「無理よ、存在しないから」
海賊A「こいつ、魔女だ!」
カリーナ「違うわ、天文学者よ」
海賊A「あぁ、天を舞うモモンガを飼育してる」
カリーナ「え?何?違う、天文学者は星を観察するの」
海賊A「ああ、モモンガとだろ?」
カリーナ「違う!モモンガなんていない!」
海賊B「じゃどうやって飼育するんだ?」

てんもんがくしゃ、という言葉を分解して「てん」を舞う「ももんが」なんて、日本語オリジナルの翻訳としか思えません。しかもたぶん、星を観察するというところにひっかけて飼育(シーク=探す)と言ってます。飼育のところだけ意識的に発音変えてるんでそうかなぁと。
じゃあ、オリジナルの英語ではなんと言っているのか気になったので、英語版にして字幕を出してみました。

「show me the map」(地図を見せろ)
「I can’t. It doesn’t yet exist」(無理よ、まだないから)
「She’s a witch!」(彼女は魔女だ!)
「I’m an astronomer」(私は天文学者よ)
「Ah! ah, she breeds donkeys.」(ああ、彼女はロバを繁殖させてるんだ)
「What? No. An astronomer contemplates the sky.」(何言ってんの? 違うわよ、天文学者は空の星を観察するの)
「Yeah, on a donkey?」(ロバに乗ってだろ?)
「No! There’s no donkey!」(違うわ!ロバなんていない!)
「Well, then how do you breed them?」(ええと、じゃどうやってロバを増やすってんだ?)

下ネタきたわー。仕方ないけどモモンガどこいったw

日本語版では、学のない海賊が、テンモンガクシャという耳慣れない言葉を聞いてテンのモモンガとアホなことを言い出して、それに真面目に答えるとさらにボケた回答を寄越すといった感じのユーモアある掛け合い、ある種のコントになっています。
それに対して、英語版ではモモンガは天を舞いません。まぁそれはなんとなくわかってました。
モモンガは英語で「スクウィレル(squirrel)」ですから。かけようがない。
けれど、話の流れはだいたい同じで、モモンガを飼育する代わりにロバを繁殖しているという点だけが異なります。
特に発音が近いわけでもないdonkeyとastronomerを勘違いコントに入れたからにはなにかしら意味があるはず。この辺、ネイティブだとおかしみがあるんだろうなというところです。

というわけでちょっと調べてみたところ、donkey、つまりロバは学名を「Equus asinus」といいます。
Equusは「馬属」、asinusは「驢馬」なのですが、このasinusにはスラングとして「まぬけ」という意味もあるようなのです。転じて、donkeyそのものもオツムの足りない人を揶揄する言い回しとしてそこそこ有名なようです。
そして、asinusの語源を辿っていくと「ass」、そう、ケツという意味でおなじみの言葉に当たりました。キスマイアスとかキック・アスとかあのアスです。
で、astronomerの「as」だけ聞いてass→asinus→donkey。・・・く、苦しい。そこに加えて「気取ったまぬけ」みたいな意味でdonkeyと意味を重ねることもできるはできますが、ちょっと海賊くんが博識すぎるような気もします。

天+ももんが(くしゃどこいった)のほうがほどよくアホっぽくて好きですね。

というわけで、なぜ原語版で「astronomer」を名乗ったカリーナに「she breeds donkey」と言ったのかご存じの方、コメントいただければ幸いです。