すごいデジカメ「ソニー α9」にあとひとつ足りなかったもの

2020年5月25日

ソニーからすごいデジタルカメラが発表になりました。

・35mm換算でフルサイズのCMOSセンサー
・20枚/秒の超速連写
・小型軽量
・4K動画撮影

という、スペックだけ見るとベラボーな機種です。

スポーツを撮ることがある人なら、(カーリングとかでない限り)連写はあるだけよこせな機能で、スポーツカメラマン御用達のNikon、Canonのテッペンでも、12枚/秒であり、まぁそれでもとんでもないんですが、それを遥かに上回る脅威の速度です。
これは、可能部のないミラーレス一眼だから可能になったもので、ミラーボックスがある従来型の一眼レフではおそらく機械的に無理でしょう。急にクルマのエンジンを2万回転/分にしろと言われたようなものです。

フルサイズは、基本的にはいいことです。
ですが、サッカーをフルサイズセンサーでド迫力に撮ろうと思うとすごい焦点距離のレンズが必要になるわけで、個人的には35mm換算で1.5~1.6倍という、いわゆるAPS-Cの焦点距離は重宝しています。副次的な恩恵ではありますが、多くのレンズで画質が低下しがちな周辺部を使わずに済むこともありがたいものです。

と言うと、APS-Cの1.5倍は要するにクロップしてるだけだと言われがちなんですが、概ね言ってることは合ってます。とはいえ画質低下の危険があるデジタルでのクロップ処理をせずに済むメリットは大きいですし、フルサイズ→APS-C相当へのクロップをするためにはかなり大きな画素数が必要になります。さらに、評価測光時にAPS-Cの測光エリアより広い範囲を測光するため、環境によっては中央部重点などの測光モードを切り替えなければならないこともあるでしょう。

閑話休題、ソニーのαシリーズはフルサイズミラーレス市場をほぼ席巻しているといって過言ではありません。ウケている理由はさまざま考えられますが、そもそもフルサイズミラーレスの嚆矢であること、ペンタプリズムとミラーボックスを不要とするため実現できた小型軽量ボディは言うに及ばず、ソニーが得意とする4K動画撮影やボディ内蔵の手ブレ補正機能もウケているようです。

なんですが、EOS 7D MarkIIというミラーボックスもペンタプリズムもある一眼レフ機を使っていて、体育館スポーツを愛するアマチュアカメラマンとしては、「フリッカーレス機能」という唯一無二な機能がある以上(1DX MarkIIにも搭載されたので無二ではなくなったけど)、なにをちらつかされようと動くことはできません。

原理的に、蛍光灯というのは周期的に点滅を繰り返す明かりです。
電源が50hzの東日本では1/100に1回、60hzの西日本は1/120に1回、点滅を繰り返しています。
ゆえに、これより早い(1/250とか1/500とか)のシャッタースピードだと、この点滅の周期のどこかを撮ってしまい、結果として色や明るさが一定しないという現象が発生してしまいます。
これを回避し、連射時にシャッターの切り始めと切り終わりで色と明るさに可能な限り変化が起きないようにするのが「フリッカーレス機能」です。(参考

なぜ他のメーカーが追随してこないのかが不思議でならない。
4K動画とフリッカーレスだったらフリッカーレスですね、断然。

ということを発売前に書いていたわけですが、ソニーが発売後にガシガシファームウェア、というかもはやOSに近いアップデートを繰り返した結果、フリッカーレス機能や瞳AFなどの新機能が追加されまくり、むちゃくちゃ高価であることとハードウェアに起因する課題(EVFの画素数不足)以外は概ね文句ないスペックのカメラに成長してしまいました。

それは、後継機として数年後に発表されたα9IIが通信機能の近代化が図られた程度のマイナーチェンジ版となってしまったことからも見て取れます。とはいえ、これもソフトウェアアップデートによって今とは異なる次元に上がってしまう可能性もあります。まぁ買えはしないんですけど。高いし、レンズ資産ないし。