晴海客船ターミナルのオブジェを撮ってきた
東京港開港50周年を記念しバブル期に建設された、東京のおしゃれな海の玄関
国内外の豪華客船が接岸する東京の海の玄関のひとつとして、東京港開港50周年を迎えた平成3年に開設された客船ターミナル。客船だけではなく、8月にはイギリス海軍の艦船「アルビオン」が寄港しており、ちょっとしたお祭り状態になっていました。
……と書くと、なんだか常に入れ代わり立ち代わりで船が接舷して、映画「タイタニック」のオープニングのごとく活気に満ちているかのようですが、残念ながらそんなわけはありません。
そもそも東京港は貨物船はともかく客船の往来が多い場所ではありません。船が接舷しない日はおそろしいほど静かで、言葉を選ばずに言ってしまうならば、手入れが行き届いた廃墟といったたたずまいです。
東京オリンピック選手村建設なう
2018年11月現在、隣接している晴海公園は閉鎖され、隣接する土地では東京オリンピックの選手村建設が急ピッチで進められており、建設関係者以外はほとんどひとけがないエリアとなっています。週末はその工事もお休みになるため、船の接舷予定がない週末は、本当にここは東京なのかと思うほどの静けさです。
「東京港開港50周年」という節目の年に作られた、平成3年(1991年)竣工というバブル終末期のものだけあり、各所にシンボリックなモダンアートが置かれたおしゃれなつくりで、映像ばえする造形から、特撮やアニメーションなど映像作品にもよく利用されています。特に平成仮面ライダーシリーズでよく使われており、いわゆる聖地巡礼で訪れる人もいるそうな。
アニメーションでは、エンドロールで東京の実写風景を流すことでおなじみ劇場版名探偵コナンで登場していたり、古いところでは、ゆうきまさみのマンガ「機動警察パトレイバー」のラストで、内海課長がSSSの隊員に刺されたのもここでした(マニアック)。
晴海ふ頭エリアを含む豊洲近辺は、すったもんだの末10月についに開場した豊洲市場でその名前が有名になりつつありますが、いま東京で最もホットな再開発エリアのひとつであり、そこここで大掛かりな工事が行われています。モダンでカッコイイ建物が多く、ステキな夜景が見られる、近未来感ある「インスタ映え」するエリアです。
先日、この地区の全体計画が発表されましたが、「HARUMI FLAG」と称し、2023年に人口12,000人の新しい街を作るとのこと。その完成予想図にはこのターミナルの特徴的なフロアがしっかり残っています。ということは、客船ターミナルとして残るかはさておき、建物そのものは少なくとも2023年までは残るということでしょう。
建物は残りそうではありますが、船着場としての機能は、2020年開業に向けてお台場に現在建設中の「東京国際クルーズターミナル」に移る予定となっています。名前がもう上位互換感ばりばりです。
まだ使えるのにもったいなくはありますが、このターミナルの手前にはレインボーブリッジがあり、豪華客船の中にはレインボーブリッジの桁下を通れない船も少なくないのだそう。タンカーみたいにのっぺりした豪華客船というのもないので、新しいターミナルはレインボーブリッジの「手前」に建設しています。
なお、この新しい東京国際クルーズターミナルに行くには東京ゲートブリッジ(通称:恐竜橋)をくぐる必要がありますが、こっちは必要な高さを確保しているとのこと。まぁ、それだっていつまで確保していられるのかわかりませんけどね。
客船ターミナルとしての役割を終えた後、どう使っていくのかについて明確なアナウンスはされていませんが、完成から27年しか経っておらず、予算がふんだんにあった時期の建物だけあってつくりもしっかりしているし、数年前に改修工事もしていて、取り壊してしまうのは実にもったいない。
ただの港じゃない!まるで現代アートの美術館
この晴海客船ターミナル、こういった用途不明なオブジェがそこそこに点在しています。単なる船着場の枠を超えて、まるで現代美術館のようでさえあります。
エントランスには、鉄骨とも違う真っ赤に塗られた金属板のオブジェが立ち並び、外の床は市松模様、スペースには逆三角錐のオブジェが置かれていたりと、用もないのに来たくなる場所になっています。
おまけに、エントランスは夜になると植栽には青、この赤い金属板は赤、横の通路の枠も赤く派手にライトアップされるという凝りよう。夜に接舷してくる船なんてほぼないんですが、いったいぜんたい誰のためのライトアップなのでしょう。デートに来るカップルのためにしてはやりすぎ感がすごい。
そんな晴海客船ターミナルですが、昼間の静けさから一転、夕暮れ時ともなると、対岸に見えるレインボーブリッジやフジテレビ社屋、反対側には東京タワーといった名所がライトアップされ始めるため、そのドラマチックな風景を見るために人がちらほら訪れるようになります。
そして、それとは別に、カメラと三脚を携えた人がちらほら現れはじめます。お目当ては、眼前に広がるお台場を含む東京湾と対岸の高層ビル群がライトアップされていく風景と、ここに設置されている金属製モニュメント「風媒銀乱」です。
カメラマンを魅了してやまない『風媒銀乱』は自然と金属のハーモニー
当サイトのヘッダー画像にも使っている「風媒銀乱」は、現代彫刻家の巨匠のひとりに数えられる伊原通夫氏によって作られた金属製のモニュメントです。「風を媒(なかだち)に銀(しろがね)が乱れる」という名が示す通り、ポールに取り付けられた多数の金属製の回転箱が海風を受けてそれぞれ気ままにゆるやかに回転し、太陽や街灯の光を反射・散乱して美しく輝くという、自然と共存する美しいオブジェです。特に、夕方にオレンジ色の太陽の光を受けて蜂蜜色に輝く風媒銀乱はロマンチックの一言。
なぜそんな巨匠のアート作品がさびれた船着場にあるのかはよくわかりませんが、たぶんバブルとはそういう時期だったんだと思います。最初からさびれていたわけでもないですし。
さておき、このモニュメントは人口の池の中に設置されており、風の凪いだ時は、池の水に風媒銀乱のみならず対岸のビル群やレインボーブリッジ、条件が良ければ東京タワーまでが鏡写しのように写りこみます。これを撮影するべく、多くのカメラマンが池の周りにかわりばんこで陣取るのですが、海鳥の羽根やうんこもぷかぷかしているので、撮るときは気を付けたいところ。だいたいはすみっこに流れていくのですが、どうしても邪魔なら掃除しましょう。
風が少しでもあったり、海鳥が池で遊んでいたりすると池の水が乱れてしまうため、この映り込み(リフレクション)をきれいに撮影するには技術より運が必要です。うんこは要りません。また、掃除のために予告なくたまーに池の水抜いちゃってるときがあるので、そういうときは・・・あきらめてレアな水なし風媒銀乱を撮って帰りましょう。公式twitterででも告知してくれるとありがたいんですが。
なお、Googleマップで見ると一見辺鄙そうなところに見えますが、東京駅丸の内南口から都バスで乗り換えなしの30分弱で来ることができます。バスの本数もそこそこ多いので、行ってみてはいかがでしょうか?
クルマで行くときも、駐車場が400円/2時間、以降30分ごとに100円、24時間の最大でも1,000円と、都内にしては良心的なお値段ですので、ぜひ寒くない時期にお越しください。吹きさらしで海風があるので夜はかなり冷えます。
撮影DATA BOX
名称 | 晴海客船ターミナル |
住所 | 東京都中央区晴海5丁目7−1 |
営業時間 | 平 日:9:00~17:00(7/20~8/31のみ20:00まで) 土日祝:9:00~20:00 駐車場は7:30~23:00 ※ターミナルビル外は公式サイトに記述なし |
定休日 | 年中無休 |
料金 | 入場無料 |
アクセス | 東京駅丸の内南口から都バス 05-1 晴海埠頭行き 30分 勝どき駅から都バス 05-1 晴海埠頭行き 12分 豊洲駅前から都バス 錦13甲 晴海埠頭行き 8分 |
備考 | 三脚・リモートレリーズ使用可 |
このページでの 使用機材 | Canon EOS 7D MarkII Sigma 10-20mm EX DC HSM Canon EF24-105mm F4L USM |
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません