都心にある廃墟、旧電通本社ビルを見てきた
きらびやかな歌舞伎座ビルが建つ東銀座から徒歩5分程度のところに、いまはもう誰も使っていない灰色のビルが建っているのをご存知でしょうか。
城壁のような壁面を持つこの建物、現在は汐留にたいそう立派な自社ビルを持っている広告代理店の巨人、電通の旧本社ビルです。急成長を続けてきた電通だけあり、このビルは既に3代目です。
電通が汐留に建てた4代目となる新自社ビルに移転した後は関連会社の電通テックが入居していましたが、現在では利用する者もなく、再開発に伴い取り壊されるのを待つ身です。
新宿に聳える東京都庁舎や、青山学院大学の向かいに建つ国連大学本部ビルなどを設計し、世界にその名を轟かせる建築家・丹下健三が設計し、大林組の施工により1967年に竣工した13階建ての建物は、威風堂々がっしりとした力強いコンクリートの柱と壁面が印象的で、隣接する公園側の壁面も真っ平らな壁ではなく、長方形のパネルを貼り付けたような意匠がかっこよく、ロボットの頭部を思わせる屋上の塔屋には、いまは取り外されてしまっているものの「dentsu」のロゴがあった痕跡があります。
丹下健三はこの地区一帯に複数のビルを建てて、空中のコリドー(回廊)でビル同士を繋ぐという壮大な都市計画を持っていました。結果的にはこの構想が形になることはなく、建てられたのはこの旧電通本社ビル1棟だけでしたが、ひとつの建物だけで完結させることなく都市そのものを統一感ある一つの単位としてデザインするところが丹下健三の真骨頂で、故に自らの事務所に 「丹下健三・都市・建築設計研究所(現・丹下都市建築設計)」と名付けたのでしょう。
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