バレーボールを10年撮ってきた素人が撮影設定を晒してみる
2008-2009シーズンから撮り始めたバレーボール写真も、はや2020-2021シーズン。最初の頃はEOS-1D MarkIIIだった機材はEOS 7D MarkIIに変え、年内を目処にEOS-1D X MarkIIへの変更を考えている今に至るわけですが、バレーボールは一応写真撮影が許可されているアリーナスポーツということもあり、写真を撮っている方もけっこういます。中には、プロカメラマンとなんら変わらない、カメラとレンズで100万円を軽く超えるような機材で撮っている方もいるので、そのへんと較べたらEOS 7D MarkIIなんていうのは写ルンですみたいなものですが(笑)、今回はどんな設定で撮っているのかを公開してみたいなと思っています。
レンズの設定(Canon EF70-200mm F2.8L IS II USM)
ちょっとしかないのでこっちを先に書いておきます。
最低撮影距離:2.5m~
手ブレ補正機能:On
手ブレ補正モード:1(全方向対応)
手ブレ補正モードだけ軽く説明しておくと、このレンズの手ブレ補正モードは全方向対応の「1」と、モータースポーツで流し撮りをするとき用の「2」があります。流し撮りをするとき以外は1から動かす必要はありません。
ではカメラのほうです。
シャッタースピード優先に宗旨変えしました
モード:M(マニュアル)
シャッタースピード: 1/1000(固定)
絞り: F2.8(固定)
ISO:自動
ほんのちょっと前まではこんな感じでした。
モード:Av(絞り優先オート)
シャッタースピード: 自動
絞り: F2.8
ISO:2500
以前の設定は、モードをAv(絞り優先オート)にして、絞りは開放のF2.8、ISO感度は2500を固定にして、もっとも変動幅が取りやすいシャッタースピードでバランスを取るようにしていましたが、今はシャッタースピードを1/1000、絞りをF2.8に固定してISO感度でバランスを取るように変えました。
「ISO感度」とは光量に対してどれだけ敏感かを示す値で、この数字が大きいほど僅かな光でも記録します。ただし、わずかな手がかり(光)を元に映像を作るということは、それだけ不鮮明になるということでもあります。ありていに言って、この数字を大きくするとノイズが増えていきます。
絞り優先オートを使っていた理由と変えた理由
スポーツ撮影では、一般的にシャッタースピード優先オートが使われます。なのになぜそうせずに絞り優先オートにしていたかというと、EOS 7D MarkIIは高感度の画質に致命的な欠点を抱えていたからです。
「APS-Cのフラッグシップ」などと言われてはいてもそこは初値で20万円を切るカメラ。10枚/秒の高速連続撮影能力を実現することにコストを全振りしたため、トレードオフとしてそういうセンサーになってしまいました。
そういう欠点を補うべく、画質を担保するためにISO感度を固定し、設定上自由度がない絞りは開放固定にして、シャッタースピードをカメラに任せて調整していたわけです。
この方法のメリットは、撮れる写真のノイズレベルが一定以下になり、画質が担保されることです。一方、シャッタースピードがコントロールできないため、ここが遅くなる場合に手ブレが起きやすくなったり被写体ブレが厳しくなるというデメリットがありました。
現在の設定にしてからは、シャッタースピードが保たれるため、ISO感度が上がってノイズが増えるかわりに「瞬間を捉える」スポーツ写真の基本に忠実な撮影ができるようになりました。
これは、次期メインカメラをEOS-1D X MarkIIにしようと決めた時に試験的に導入した設定の変更で、思惑通りの結果が得られたのでそのまま採用しています。ただ、本当の本当にEOS 7D MarkIIの高感度耐性はクソオブクソなので、ISO4000あたりから直視できないレベルで、ISO6400なんてざらっざらですからね。できることなら使いたくないんですが慣れるためだと割り切るほかない状態です。一刻も早く変えたい。
さて、泣き言は置いておいて続きです。
ホワイトバランスはオート、潔くRAWのみ
ホワイトバランス:Auto
ホワイトバランス補正:0.0
ピクチャースタイル:スタンダード
記録画質:RAWのみ
ホワイトバランスはオートです。アリーナスポーツは人工の光で、多くは蛍光灯かLED光源です。なら「蛍光灯」に設定するか、白いものを撮って「カスタムホワイトバランス」にすればいいじゃないかと思うかもしれませんが、そうしないふたつの理由があります。
アリーナでは場所によって色も明るさも変わる
ひとつは、アリーナの光源は場所によって色温度が安定していないということ。そしてもうひとつはRAWで撮っているからです。
人工光源は、50hzないし60hzの周波数で明滅を繰り返しています(=1秒間に100~120回)。これは白熱球だろうと蛍光灯だろうとLEDだろうと同じです。とんでもない回数なので、人の目には安定して光っているように見えますが、1/1000のシャッタースピードならあっさりと影響を受けてしまいます。なので、明るさが実は一定ではありません。さらに、天井のライトを見てもらえればわかりますが、いくつかの異なる色の照明器具をミックスしています。さらに、館内を飽和させるような圧倒的な明るさでは眩しくてスポーツにならないので、明るさはある程度抑えられています。とどめに、照明の数はそんなに多くはありません。
するとどうなるかというと、選手のいる場所によって色も明るさも異なるということが起きます。ホワイトバランスを固定するということが無理な理由がお分かりいただけるでしょうか。デジタルカメラのカスタムホワイトバランス機能は、色が一定の環境でなら意味がありますが、アリーナにおいてはほぼ意味がないです。
なので、撮影後のファイルを見るとそこそこ色と明るさが異なっています。これをレタッチで極力同じ色合いと明るさにしていくわけですが、JPEGファイルはこのレタッチに弱く、特に暗い画像を全体に明るくしたり、色を変えていくとすぐに破綻してしまいます。そうならないように、レタッチ耐性が高いRAW形式で撮っておくのです。色が異なっているとはいってもおおよそ2パターンなので、現像パラメータを2種類使い分けて対応しています。
さて、次は細かいところです。
「フリッカーレス」は使いたいけど使わない
電子音:切
レンズ光学補正:On
オートライティングオプティマイザ:OFF
色空間:Adobe RGB
長時間露光のノイズ低減:OFF
高感度撮影時のノイズ低減:OFF
高輝度側・階調優先:OFF
赤目緩和機能:入
フリッカーレス撮影:しない
ミラーアップ撮影:OFF
電子音は切ります。「ピピッ」と合焦のたびに鳴ってたら迷惑きわまりないので。というかポートレート撮影以外ではいらないでしょう、これ。
「フリッカーレス撮影」機能は、さきほど書いた「蛍光灯の特性上避けられない、明るさや色が変わりやすい人工光源下」で、連写した一連の画像で色合いや明るさが変わってしまうのを防ぐ機能です。この機能、すごく優秀なので本当ならOnにして使いたいのですが、蛍光灯の明滅にタイミングを合わせに行く都合上、代償として連写速度がかなり低下します。RAWで撮影するためレタッチで対応しやすくなったことと、照明器具の進歩でそれほど大きく色・明るさの変動が起きにくくなったのでOffにするようになりました。
ただ、古い体育館だと照明器具が更新されておらず、色や明るさが大きく変わってしまう場合があるので、そういうときはやむなくOnにしています。また、もしJPEG撮って出しの速報性が第一に求められるプロの現場であれば迷うことなくOnにしていると思います。
ライブビュー関係は飛ばします。
AF Config モード:Case 2(被写体が急に現れることがある時)
ここはキヤノンの一部機種限定の機能ですね。AIサーボAF(コンティニュアスAF)の特性をプリセットしておくモード設定ですが、ここはコートサイドから撮る前提の設定です。コートエンドの場合、そこまで選手が交錯することはないのでCase3に変えます。ただ、これ正解なのかいまいち自信ありません。
露出補正ステップ:1/3
ISO感度設定ステップ:1/3
ドライブモード:高速連続撮影(H)
AFモード:AI SERBO AF
ドライブモードとAFモードは言うに及ばずですかね。
ちなみにいわゆる親指AFで撮っています。
でなければバックアタックとかリベロのスーパーレシーブなんて撮れないと思います。
というわけで、誰に教わることもなく自己流で10年重ねてきた経験則だけで組み上げてきた設定をつらつらと書いてみました。本記事はバレーボール撮影に主眼を置いていますが、バドミントンや卓球、バスケットボールなどアリーナスポーツ全般でも基本的に通用すると思います。みなさんがアリーナスポーツで写真を撮ってみたいと思った時になにかの参考になれば幸いです。
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