いきなりトランスレート!新しいWeb翻訳のスタンダード『DeepL翻訳』

トンデモ翻訳が多かったオンライン翻訳サービス

英語が苦手なヒトにとって、Web翻訳は長らく「使えなくはないけど微妙」なシロモノでした。ほんとうにざっくりした文章の「言いたいだろうこと」はつかめても、細かな部分となると怪しいもので、中国とかの看板に見られるトンデモ日本語のようなおかしな翻訳文を出してくることもまま見られました。

その流れを変えたのが、機械学習と人力修正を取り入れたGoogle翻訳で、初期はやっぱりトンデモな機械翻訳を出してくることや、勝手に固有名詞だと判断して楽曲のタイトルを意訳しまくった邦題を出してくることもありました。
現在ではそういったこともあまり見られなくなり、企業ウェブサイトの簡易英語版に使ってもギリ行ける程度にまで成長してきています。

もっとも、こういったWeb翻訳がちゃんと正しい訳をするためには元となる日本語の文章がきちんとしていないと出てくる英文もそれ相応のクオリティになってしまいます。「いいかい? ゴミを入れたらゴミしか出せないんだ(恵三郎/草水敏「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」第2巻より)」んですね。

いきなりトランスレート! ドイツ生まれの『DeepL翻訳』

そういうわけで、ここ数年はある程度「使える」Web翻訳としてはGoogle翻訳が最も確実性が高かったんですが、ここに来て急に「いきなり超使える」Web翻訳サービスが出てきました。もちろん無料。

それが、2017年夏に彗星のごとく現れた『DeepL翻訳』です。
これまで、このテのサービスは常にアメリカのベンチャーから出てくるのが常識でしたが、なんとこのサービス、ドイツ生まれです。
シリコンバレーどころか西海岸でもアメリカでもなく、ヨーロッパ生まれのナンバーワンクオリティ。

Google先生を超えるわけねーだろと言われそうですがここは論より証拠、ちょっと専門性の高い英語の例文をDeepL翻訳とGoogle翻訳にかけてみましょう。原文がこちら。

These projects are part of Folding@home’s efforts to assist researchers around the world taking up the global fight against COVID-19. At the time of release, this is the latest news update: https://foldingathome.org/2020/03/10/covid19-update/

These projects are CPU projects to simulate COVID-19 proteins to learn about their dynamics and function. These supplement high-priority GPU projects of the main protease as well as the COVID-19 receptor binding domains. All can be considered potential drug targets.

Folding@home Project #14366 Summaryより引用

そして、これでGoogle翻訳にかけた結果がこちら。

これらのプロジェクトは、COVID-19に対する世界的な戦いに取り組む世界中の研究者を支援するFolding @ homeの取り組みの一部です。 リリース時の最新のニュースアップデートです。https://foldingathome.org/2020/03/10/covid19-update/

これらのプロジェクトは、COVID-19タンパク質をシミュレーションしてそのダイナミクスと機能を学習するCPUプロジェクトです。 これらは、メインプロテアーゼとCOVID-19受容体結合ドメインの優先度の高いGPUプロジェクトを補完します。 すべては潜在的な薬物標的と考えることができます。

Google翻訳にかけた文章(2020/4/25現在のもの)

もうこの時点でかなり高いクォリティです。これ超えるとマジできんのか。
では、こちらがDeepL翻訳による翻訳です。どん。

これらのプロジェクトは、COVID-19に対する世界的な戦いに挑む世界中の研究者を支援するFolding@homeの取り組みの一環として行われています。 リリース時の最新情報は以下の通りです: https://foldingathome.org/2020/03/10/covid19-update/

これらのプロジェクトは、COVID-19タンパク質のダイナミクスと機能を知るために、COVID-19タンパク質のシミュレーションを行うCPUプロジェクトです。これらのプロジェクトは、COVID-19受容体結合ドメインだけでなく、メインプロテアーゼの優先度の高いGPUプロジェクトを補完するものです。これらのプロジェクトはすべて、潜在的な創薬標的となる可能性があると考えられます。

DeepL翻訳にかけた文章(2020/4/25現在のもの)

すげぇ。
ことわっておきますが、なにひとつ手を加えていません。ただコピペしただけです(閲覧時期により、より精度が上る可能性はあります)。

日本語としても良質な訳文

翻訳って、英語だけが得意でもだめで、日本語として意味の通るように作文できる日本語能力がすごく大事なんですが、はっきり言って、このレベルの日本語文章を書けない日本人英訳者は山ほどいると思います。

専門用語への対応ということでは「drug targets」を「薬剤標的」としたGoogle翻訳と「創薬標的」としてDeepL翻訳の違いが出ていますね。どっちも間違いではないですが、文意としてより的確なのはDeepL翻訳のほうだと思います。

もうひとつ行ってみましょう。今度はテクノロジー分野から、Appleが先ごろ発売した新しいMacBook Airのプレスリリースからです。

Offering quad-core processors for the first time, MacBook Air now delivers even more speed across everyday activities, from organizing photos and creating presentations to editing videos. Featuring the latest 10th-generation Intel Core processors up to 1.2GHz quad-core Core i7 with Turbo Boost speeds up to 3.8GHz, MacBook Air delivers up to two times faster performance when compared to the previous generation. And with Intel Iris Plus Graphics, MacBook Air now delivers up to 80 percent faster graphics performance, so graphics-intensive activities like playing games and editing video are faster than ever.

Apple MacBook Airプレスリリースより引用

ではこれをGoogle翻訳で。

MacBook Airは初めてクアッドコアプロセッサを提供し、写真の整理やプレゼンテーションの作成からビデオの編集まで、日常のアクティビティ全体でさらに高速化しました。 最新の第10世代Intel Coreプロセッサ、最大1.2 GHzクアッドコアCore i7、最大3.8 GHzのターボブーストを搭載したMacBook Airは、前世代と比較して最大2倍のパフォーマンスを実現します。 Intel Iris Plus Graphicsにより、MacBook Airは最大80%高速なグラフィックスパフォーマンスを実現し、ゲームのプレイやビデオの編集などのグラフィックスを多用するアクティビティがこれまでになく高速になりました。

Google翻訳結果より(2020/4/25現在)

冒頭のofferingを「提供し」としています。
でもってDeepL翻訳がこちら。

クアッドコアプロセッサを初めて搭載したMacBook Airは、写真の整理やプレゼンテーションの作成からビデオの編集まで、日常の活動においてさらなるスピードを発揮します。最新の第10世代Intel Coreプロセッサ(最大1.2GHzのクアッドコアCore i7、Turbo Boostは最大3.8GHz)を搭載したMacBook Airは、前世代と比べて最大2倍のパフォーマンスを発揮します。さらにIntel Iris Plus Graphicsを搭載したMacBook Airは、グラフィックス性能を最大80パーセント向上させたので、ゲームのプレイやビデオの編集など、グラフィックスを多用する作業がこれまで以上に速くなりました。

DeepL翻訳結果より(2020/4/25現在)

こちらはofferingを「搭載し」にしています。文章として自然なのはこちらですね。Google翻訳だと「誰にだよ」ってなっちゃいます。ユーザーに提供するのはプロセッサそのものではないですからね。

ちなみにこのプレスリリースはアップルジャパンのサイトにも日本語があるので参考までに引用します。

クアッドコアプロセッサを初めて搭載したMacBook Airは、写真の整理、プレゼンテーションの作成、ビデオの編集といった毎日の作業にさらなるスピードを与えてくれます。Turbo Boostの使用時に最大3.8GHzで稼働する、1.2GHzの最新の第10世代IntelクアッドコアCorei7プロセッサを搭載し、新しいMacBook Airは前世代のモデルと比較して最大2倍の処理能力を発揮します。また、Intel Iris Plus Graphics の搭載により、新しいMacBook Airはグラフィックスの処理能力も最大80パーセント速くなり、ゲームプレイやビデオ編集など、高速な描画が求められる作業をレスポンス良くこなせます。

アップルジャパン MacBook Airプレスリリースより引用

公式リリースでも「Offering」は「搭載」としています。
そこ以外の序盤はGoogle翻訳、DeepL翻訳、公式リリースとも同じですが、第2パラグラフからけっこう分かれます。公式リリース版は最後の「faster than ever」という箇所を「これまでよりも」という比較表現ではなく「レスポンス良くこなせます」というざっくりした表現としているのが特徴的でしょうか。

もっとも異なるのが「第10世代 Corei7プロセッサ」の性能についての書き方で、個人的にはGoogle翻訳の書き方だと3つの異なる何かを搭載しているようにも読めるのでちょっとどうかなと思います。DeepL翻訳では元の英文にはないカッコ書きにしているのでプレスリリースっぽくはないものの、読み手に優しいように感じました。
公式リリースももちろん悪くないですが、この箇所についてわかりやすさという意味ではDeepL翻訳がベストかなと思います。

どのアプリからでも使えるデスクトップアプリ

さらに、このDeepL翻訳にはWindows向けアプリもあります。

使い方は簡単。インストールして、訳したい文章を選択してCtrl+Cを2回(Ctrlを押しながらCキーを2回押す)するだけ。

セットアップ画面がシンプルすぎる。右下の「Got It!」クリックするだけ。
訳したい文章を選択してCtrl+Cのあとにもう一度Cキーで
こんな感じに

こんな風に流れるような翻訳ができまっせ、と説明されてるわけですが、実際はそこまで単純ではなく、Ctrl+C→Cとすると、画面右下にこんなちっこい通知が出て、これをクリックする必要があります。まれに Ctrl+C→Cで出ることもなくはないですが、だいたいはこんな感じ。

ちっちゃ。これをクリックすると上画像の右下のウィンドウが開く

なお、DeepL翻訳で一度に訳せるのは5,000文字(1バイトの英文字も2バイトの日本語も1文字は1文字カウント)まで。
また、WordやPowerPointのファイルをまるごと翻訳して別ファイルとして戻してくれる機能もありますが、日本語の文書は現時点(2020/4/25)で非対応となっています。
なお、無料版でもこの機能を使うことはできますが、DeepL Pro版への登録を促すヘッダーが追加されます。
試しに英語→ドイツ語→英語としてみましたが、まったく同じ文章に戻ってはこなかったものの必要十分なクオリティで、法律が絡む契約書のようなものでなければ問題ないように感じました。

文字数制限がなくなりAPIへのアクセスもできるPro版

「無料版でも」と言いましたが、DeepL翻訳にはPro版もあり、文字数制限の撤廃、文書まるごと翻訳できる書類数の1日あたりの制限の撤廃、入力履歴のすみやかな消去、APIへのアクセス、翻訳支援ツールへのDeepLエンジンの組み込みなどができるようになります。

ただ、個人レベルで使うぶんには無料版でもまったく問題はなく、たとえばStayHome期間中に英語学習する際の自習にも十分使える良質な先生になってくれるレベルだと感じました。

まぁ、Google翻訳はカメラを向けるとARで自動翻訳してくれる機能とかまた違う次元の使いやすさがありますが、DeepL翻訳も今後のサービス展開が気になるサービスですね。

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